カレー屋

 休日暇なので街中をぶらぶらしてると、古ぼけた外観だが雰囲気の良さそうなカレー屋を見つけたので入ることにした。
 狭い店内に客は50代後半くらいのおじさんとおばさんの二人連れだけ。なぜかおばさんの方が肩を震わせてしくしくと泣きながらカレーを食べている。夫婦喧嘩でもしているのだろうか。
 カウンター席に座り無愛想なウェイトレスにチキンカツカレーを注文すると、2分ほどで出てきたので驚いた。
 がっついていると、食べ終わったらしいおばさんが涙を拭きながら店主に話しかけている。


「ここは何年くらい前からあるんでしょうか。」
「うちは昭和37年からだから…もう40年以上になるね。」
 涙に気づかないようなふりで答える店主におばさんは
「私高校生の頃この辺に住んでまして。その頃よくこちらで食べさせてもらってたんですよ。久しぶりに帰ってきたらまだあったのでうれしくて…。」
「ばかだな。」とか言いながらおばさんを労わる旦那さん。うれしそうな恥ずかしそうな表情で「いつまでもやってるから、また来てね。」と声をかける店主。
 いいもん見させてもらったな、とすがすがしい気分になりながら、黙っていられなくて俺も店主に声をかけた。



「俺、カツカレーじゃなくてチキンカツカレー頼んだんだけど。」