ヒーロー

 床屋で待ち時間中、後から入ってきたヤーさんぽい風貌のおっさんが、
「何でわしが名前言わんといけんのじゃコラ。客商売じゃろが。失礼なやつじゃのう」
などと店員のお姉さんに大声で訳の分からない言いがかりをつけていた。
 震えて縮こまっている店員さんを見るに見かねた俺はすくっと立ち上がり
「ええ加減にせえ! ええ年したおっさんが駄々こねて若い姉ちゃん困らせて恥ずかしくないんか!」
と怒鳴りつけてやると、おっさんはチッと舌打ちをしながらもおとなしくなって渋々と店員に名前を告げた。
 という妄想をして待ち時間の暇をつぶした。
 髪切ってもらってるときに隣を見ると、おっさんがさっきの店員さんに髪切ってもらいながら仲良さそうに談笑していた。