母ちゃんの背中

 残っている記憶の中で一番古いものは、3歳くらいのときに急に高熱を出して、母におんぶして病院に連れて行ってもらったことだと思う。
 俺は幼児の割にでかい図体できっと重かっただろうに、交通事故の後遺症がある足を引きずりながら、離れた場所にある病院までグチも言わずに連れて行ってくれた。俺は朦朧とした意識の中で、母の背中が大きくてあったかくて安心していたことを覚えている。




「母ちゃんの優しさがありがたくて、特に記憶に残ったんか。いい話やね」
「ううん、そうじゃなくて、その後おかんに
『なんか金太郎とクマみたいやね』
って言ったら思い切りゲンコツされたからよく覚えてるねん」


「この親不孝もん!」