逃げて行った

 法事で田舎に帰った日の夕方、外をぶらぶら散歩していると、7、8匹の野良猫に囲まれた父がデレデレ顔で
「よ〜しよし、お前らかわいいのう。この辺、車通るけえ気をつけえよ」
などと話しかけながら頭をなでていた。
 呆れて見ていると、猫の一匹が俺に気づいてハッとして逃げて行った。
 慌てて残りの猫たちも走って逃げて行った。
 父も顔を赤くして逃げて行った。