しったか

 小学4年の頃。昼休憩に校庭で恒例の草サッカーをして遊んでいた。
 最初は立て続けに3点入れられて劣勢だった俺のチームだが、じわじわと1点差まで追い上げ、とうとう主力のKくんが同点のゴールを決め、歓声が上がった。
 と思った瞬間、ゴールポストの外でぼんやりサッカーを見ていた同級生のTくんが発したひとことに場は静まり返る。
「今のオフサイドじゃん?」


 当時キャプテン翼が流行っていた時代で、オフサイドという言葉はみんな聞いたことはあっても、その詳しいルールについて説明できる者はいなかったはずだが、相手チームは
「そうじゃそうじゃ、今のオフサイドで!」
「ゴール無効じゃー」
と言い始め、うちのチームも
「くそっ、惜しかったな」
オフサイドじゃ仕方ないな」
などとあきらめムード。そのまま休憩時間は終わり、我がチームの敗戦となった。


 放課後、気になってTくんに聞いてみた。
「なあなあ、オフサイドって何なん?」
「知らん。適当に言うたんじゃ」


 誰一人「何それ?」のひと言が言えなかったのか。