拝み屋

父が若いころ、うっかりカギをかけないまま社用車から離れたせいで、その車が盗まれるということがあったそうだ。
警察に届けはしたものの、「戻ってくる可能性はかなり低いですよ」と言われて、相当落ち込んでいたら、気をつかってくれたのか、社長が声をかけてきた。
「会社の近くに、けっこう立派な社を構えている拝み屋さんがいて、近所で評判なんだ。そこへ行って、車がどこにあるか探してもらいなさい」
と、お布施用のお金まで握らせてきた。
ばかばかしいとは思ったけど、社長の言うことなので断るわけにもいかず、その拝み屋を訪ねて事情を話すと、
「何もしなくていい。1か月ほど待ちなさい」
と言われただけだった。
言われたとおりに何もせず1か月ほどが経ったころ、警察から、盗まれた社用車が乗り捨てられて見つかったという連絡があった。
拝み屋は本物だったのかもなあと思いつつも、結局は何もしなかっただけだし、戻ってきた車はあちこちぶつけられてボロボロだったので、なんだか釈然としない思いだったんだって。

茶飲み友達

職場の先輩が、古い書類を整理してるとき、懐かしい名前を見つけたようで
「ああ、ヨウコちゃん、この子は大柄な子でね。学生時代に柔道でいいところまで行ったんだよ。でも心は優しい子でね。あ、田中くん。彼は英語がペラペラで……」


年あんまり変わらないのに、ばあちゃんの昔話に付き合ってるみたいになってきたぞ。

もうひとつ

100円ショップで買い物してレジ打ってもらってるときに、傍に陳列してあるチョコを一個カゴに入れたら、
「ふたつで105円なのでもうひとつどうぞ」
って言われて、思わず満面の笑みで
「えっ、いいんですか?」
と聞き返してしまった。


喜び過ぎだろ。

求人

まだ俺が小さかった頃、父の勤める会社で求人チラシをたくさん刷り過ぎてしまい余ったものをうちに持って帰ってくれて、俺はその裏に絵を描いて遊んでいたことを覚えている。
先日、母にその話をしたら、
「あんたが飛行機とか電車の絵を描いて見せてくれるんだけど、表の『女性求ム!』っていうデッカい字が思いっきり透けて見えて、正直ちょっと複雑だったよ」


外で見せて歩かなくてよかったなぁ。