仮病

 小学5年生の頃の話。
 どうしてもドラクエの続きがやりたくなった俺は、仮病を使ってまんまと学校を休むことに成功した。
 母は
「ほんとにひとりで大丈夫? ちゃんと寝て早く治すんよ」
と心配してくれながらも仕事に出かけて行ったが、忘れ物を取りに帰ってくるのではと心配になり、2階の窓から母の姿を見下ろすと、こちらに気づいて笑顔で手を振ってくれた。見えなくなるまで何度も振り返って手を振っていた。


 母がいないうちに遊んだドラクエは、いつもと違って全然おもしろくなくて、すぐにやめてしまって布団に潜り込んだ。


「仮病の風邪、早く治そう」