毛抜き

 讃岐出身の母は、高校の頃、合唱部の部長だったそうだ。
 ある年、大会に出るために練習した唄は賛美歌の「まもなくかなたの」。「たんたんたぬきの○○は〜」の元唄として知られる名曲なんだけど、替え歌の方が有名だったせいで、みんなふざけて
「たんたんたぬきの○○が〜」
と唄って練習にならなかったらしい。
 母は穏やかな性格だったので、厳しく指導することができず、困った末に用意したのが「毛抜き」だった。
「今度ふざけて歌った人は、これで毛を一本抜きます。どこの毛かは今は言いません」
 それ以来まじめに練習するようになった合唱部。無事に大会でいい成績を出し、全国大会にまで出場できたらしい。


 穏やかな性格っていうのは撤回したい。