記憶の捏造
子供の頃、2歳下の弟と2回ほど激しい口論になったことがある。その原因はどちらも「そのネタを思いついたのは俺だ」という思い出すのも恥ずかしいくらいくだらないものだった。
エジソンとベルじゃあるまいし、しょうもないネタの発明者がどちらでも一向に差し支えないようなものだけれど、俺は自分が考えた道筋まで覚えているのだから自分が発明者で間違いないと思っていたので主張を曲げることはしなかった。かといって弟が嘘をついているようにも見えなかったので、後に冷静になって考えてみると、不思議に思う気持ちの方が強かった。
もう少し大人になって、人間は無意識に記憶を捏造してしまうことがある*1という話をどこかで知り、例のケンカもどちらかの記憶の捏造が原因だったのかも知れないと思い、弟にその話を振ってみた。
「は? 知らない。そんなケンカした覚えないよ?」
俺は記憶を捏造したという記憶を捏造した可能性が浮上してきたよ。