大学1回生の頃アルバイトしていた近所のレストランで、料理長の奥さん(50歳前後くらい)が他のアルバイトの子たちに「ママさん」と呼ばれて慕われていた。
当然新しく雇われた俺も料理長の奥さんのことを「ママさん」と呼ぶ以外にない訳だが、その使い慣れない響きが猛烈に恥ずかしくて、ぼそぼそと口の中で呼ぶか、なんとか「ママさん」と呼ばないで済むよう努力したりした。
そんな下らないことに恥ずかしさを覚えること自体が恥ずかしかったが、当時まだ10代で、使い慣れないのは当たり前だし、だいたい「ママさん」といえば火サスか何かで場末のバーの厚化粧の「ママさん」を連想してしまうものだから仕方がない、と自分をなぐさめていた。
あれから10年、俺も自他共に認めるオッサンになったが、職場の近所の小さなレストランの女店長が常連客から「ママさん」と呼ばれているのに、同じく常連である俺は「ママさん」と呼ぶことができない。恥ずかしいから「あのー」「すいませーん」とかって呼ぶ。
ああ、俺はまだ子供の頃のままだったんだなあ。(うまいこと言った)
自然に「ママさん」と言えるようになったそのときこそが、俺が真に一人前の大人になれたときに違いない。
などと思ってたけど、先日「おまえ酒飲めなくて呑み屋行ったことないから慣れないだけだろ。」との指摘を受けてあっさり解決したので、もうどうでもいいや。